はじめに で書いた通り、僕は起業に失敗して、どん底の人生を歩んだ。毎日「死にたい」とか「自殺したい」とか考えながら暮らしていた。
そんな僕は、あることがきっかけで心療内科にいった。
数年かかったけれど、僕は心の病を克服した。いま、「死にたい」とか「自殺したい」といって声を殺して泣いていたころが嘘のように心が軽くなった。
僕はあの苦しみから解放された。
もし君がいま人生に生き辛さを感じて、苦しい思いをしているなら、心療内科に行ってみるべきだ。
心療内科に行ったからといって、君の心の病がすぐに治るかどうかはわからないけれど、「あと一歩進んで本当にヤバくなったときに行けるかかりつけの心療内科」があると妙な安心感がある。僕はこの安心感に支えられてここまできた。
今回は、僕の心療内科にかかったときの体験談を紹介しようと思う。この記事が、君が心療内科へいくきっかけになったらいいなと願っている。
目次
心療内科にいく前
僕が心療内科に行ったのは、再就職してサラリーマンになったあと、しばらくたってからだ。
起業に失敗してどん底にいたころから「自殺したい」と思っていたんだから、本当はその頃に心療内科に行くべきだった。
でも、僕はそのまま放置していた。
サラリーマンになって半年くらいたったころ、円形脱毛症になった。僕はその時、ようやく重い腰を上げた。
医者が言うには、円形脱毛症はだいたい3か月くらい前の出来事がきっかけでできるそうだ。
3か月前と言えば、異動で会社の中でいちばん厄介な人物の下で働くことになったころだ。おそらくそれが円形脱毛症の原因だろう。
夜眠れないし、眠っても夜中に目が覚めてしまうし、毎晩仕事の夢を見るという状態だった。
自分では、まだまだやれると思っていたけれど、どうやら身体が限界だったらしい。
皮膚科と同時に、心療内科にも行ってみることにした。
ちなみに、僕はこのころも相変わらず「死にたい」「自殺したい」という気持ちがおさまらなかった。
だけど、円形脱毛症をきっかけに心療内科に行ったため、僕の治療は円形脱毛症にフォーカスがあたることになった。
ところで、これはかなり後になって思ったことだけれど、「死にたい」というのはまだしも、「自殺したい」と思うのはかなり精神的にやられている証だ。
心身健康な友人に聞いてみたところ、「死にたい」と思うことはたびたびあっても、「自殺したい」とまでは思わないらしい。
もし、君が「自殺したい」と思っているようなら、すぐに心療内科にいくべきだ。
心療内科は敷居が高く感じると思うけれど、行ってみると全然普通だ。
下で僕の心療内科での治療をちょっとだけ紹介する。
僕が選んだ心療内科
心療内科に行ったことが無い人ならほとんどの人がそうだと思うけれど、僕はどんな心療内科に行ったらいいか悩んだ。
僕の友達が行った病院は、話をろくに聞かず、やたら保険適用外のカウンセリングを勧めてきたという。
僕はそんな病院はごめんだ。
ホームページを見比べてみても、いい病院なのかそうでないのか、全然見当つかない。
ホームページはよさそうでも実際は大したことが無い病院なんてたくさんあるし、逆にホームページがしょぼくてもいい病院だってたくさんある。
結局、行く前にあれこれ悩んでも仕方がないと思い、僕は下の二点を満たす病院を近くで見つけ、行ってみた。
予約不要
正直、心が疲れている時は外出が億劫で仕方がないときがある。予約しても、しんどくてその日に行けなかったら、また予約をとり直さなきゃならない。
こうなってしまうと、いつ受診できるかわからない。
それより、自分の状態がいい時にいつでも行けるような病院の方がいい。
そう思って、僕は予約不要の病院に行くことにした。
労災の取り扱い
労災保険指定医療機関というのがある。
この労災保険指定医療機関というのは、サラリーマンが仕事が原因で負傷したり病気になった場合、原則として無償で治療を受けることができる病院だ。
僕は労災申請をする可能性があった。
だから、労災保険指定医療機関だったら労災申請をするときにスムーズにできるだろうと思って、厚生労働省のホームページに掲載されている心療内科に行くことにした。
労災保険指定医療機関 (厚生労働省ホームページ)
僕の通っている心療内科の良かった点
結果として、上で選んで行ったみた心療内科はとてもいい病院だった。
知人に紹介したところ、知人も「すごくいい」と言っていたので、たぶん公平にみても決して悪い病院ではないと思う。(ちなみに、この知人は、前に別の心療内科にかかっていた。)
どんな点がよかったか、下でいくつか挙げてみる。
実際に行ってみないとわからない点だけど、病院を選ぶ際 (というより、その病院にかかり続けるかどうか判断する際) の判断材料にしてみるといいと思う。
話をよく聞いてくれる
心療内科でも、患者の話を禄に聞かず、「ハイ、じゃあ薬を出しておきます」で終わらせる医者も多いという。
この点、僕の心療内科の先生は全然違う。
僕の通っている心療内科の先生は、初回は30分くらいかけて丁寧に話を聞いてくれた。
二回目以降も、僕が話すことを丁寧に聞いてメモをとってくれ、いつもだいたい30分くらいは話を聞いてもらっていたと思う。
おかげで、それまでなかなか人に言えなかったいろいろな事を、医者の前で話すことができた。
こうやってよく話を聞いてメモをとってくれていたから、僕の先生は僕の仕事についても詳しくなっていた。
「上司はどう?」と毎回のように聞いてくれた。
僕がおかれている環境に対しても理解をした上で、症状を判断しようとしてくれるから、信頼できる。
すごくいいなと思った。
自費診療のカウンセリングを勧めない
心療内科の診察とカウンセリングは違う。
何がどう違うのかよくわからないのだけれど (僕の先生が話をよく聞いてくれるタイプの先生だからかもしれない)、たいてい心療内科に行くと「自費診療ですが、カウンセリングを受けますか?」とすぐに勧められるらしい。
カウンセリングは自費診療だから、もちろん高い。
病院によってまちまちだから一概にはいえないけれど、1時間1万円くらいが相場だそうだ。
僕の病院は、こういうのを勧めずに、医者自らが話をきちんと聞いてくれる。ありがたい。
待ち時間外出OK
僕の病院は、予約不要だし、一人一人の診察時間が長い。
これはいい事なんだけれど、その反面、待ち時間が長い。
運が悪いと、受付を済ませてから診察まで、3時間くらい待つことになる。
そのため、僕の病院では待ち時間は外出してよいことになっている。
受付を済ましたときに、「ちょっと外出てていいですか?」と受付の人に聞くと、「大丈夫ですよ、○時までには戻ってきてください」と答えてくれる。
だからその間に、僕は昼ご飯を食べに行ったり、近くの家電量販店で最新型の製品の情報収集したりしていた。
アットホーム
僕の心療内科は、張りつめた緊張感がない。
受付の看護婦さんは、素朴で愛想がいい。
「最近来なかったねぇ」「今日は会社帰り?」と声をかけてくれる。
内装も古いし、あんまり洗練された感じじゃないけれど、なんとなく、アットホームで居心地がいい。
僕はこういう点も好きだ。
心療内科における診察の流れ
これから心療内科にかかる人のために、心療内科での診察の流れを紹介しようと思う。
あくまで僕のケースだから、病院によって診察の流れはまちまちだと思うから、あくまで参考程度に考えてほしい。
1. 電話で問合せ
⇒予約不要ということを念のため確認。
2. 初回の診察
⇒受付で問診票(A4 1ページ)を渡されて記入した。問診票がどんな内容だったかよく覚えていないけれど、現在の症状とか既往歴とか、どの診療科でも書くような一般的な内容だったと思う。診察は30分以上かけて、とにかく話をよく聞いてくれた。次回心理テストを受けるよう医師から指示された。薬を2週間分出してくれた。
3. 2回目の診察
⇒心理テスト(?)を受けた。回答はコンピューター処理され、結果は第3回目の診察で聞いた。医師から「あなたは見た目によらず、深く考え込む方だね。」と言われたこと以外はあまり印象に残っていない。診察中に家族の既往歴を聞かれた。この時も、薬を2週間分出してくれた。
4. 3回目以降~
⇒あいかわらず、30分くらいかけて丁寧に話を聞いてくれる。薬を2週間分出してくれた。
僕は2週間ごとに通っていたんだけれど、さすがにだんだん話すことが無くなってくる。それに診察までの待ち時間も長い。
だから、僕は何回か通ったあとは、薬だけ出してもらうようにした。薬だけ出してもらうには、受付で「今日は薬だけ下さい」と言えば大丈夫だ。心療内科の薬は1か月分処方できるそうなので、毎回1か月分ずつ処方してもらった。
診断結果
話は聞いてくれるけれど、何の病気かそういえば聞いていないということに気が付いて、4回目か5回目くらいの診察の時に、自分から「これって鬱病ですか?」と聞いた。
医者は考えながら「適応障害でしょう」と言っていた。
鬱病にしては、表情が明るいらしい。僕は人前で落ち込んだ顔をするのが苦手だから、明るい笑顔を作っていたんだけれど、それが影響したのかもしれない。
とはいえ、あいまいな言い方だったから診断は難しそうだ。
僕が心療内科で処方された薬
僕は、スルピリド「アメル」 (ドグマチール)と クロナゼパムを処方されていた。
スルピリド「アメル」はもともと胃薬として開発された薬だけれど、鬱病にも効くということが分かってきて、後年抗鬱剤として処方されるようになった薬だという。
ここだけの話、正直、この薬が効いたかどうかよくわからない。
夜中目覚めることがなくなったから、その点に関してだけは効果は感じた。
でも、死にたい、自殺したいと思う気持ちがその後もずっと続いたから、今考えれば薬を変えてもらえばよかった、と思う。
(薬を変えてもらうには、診察の時に「自殺したいという気持ちが消えない」と言えばいいのだけれど、いつも言うのを忘れてしまうのだ)
心療内科でかかった費用
僕の場合、一回診察を受けるたびにかかる費用はだいたい下の通りだ。
診療:1,430円 (3割負担)
薬代:1,070円 (3割負担)
薬代は、薬局や処方箋を出した時間帯によって微妙に値段が変わるらしい。
ちなみに、看護師をやっている友人からの情報だけど、お金がないときは、「薬はいりません」というと、医者は薬を出さないという対応をしてくれるとのことだ。心療内科にかかるだけのお金がないという人は試してみよう。
それと、鬱病には公的な補助金もあるので、使いたい人は自分が対象者に該当するかどうか調べよう。
心療内科に行って良かったこと
処方された薬が効いたかどうかわからなかったけれど、それでも僕は心療内科に行って良かったと思っている。
かかりつけの心療内科があるから、症状が深刻になったときにすぐに相談できるという安心感がある。
その安心感に支えられて、僕はなんとか、この何年にもわたる長い苦しい時期を乗り越えることができた。
上で書いたとおり、心療内科にかかり始めて薬を服用するようになっても、「自殺したい」と思うのは変わらなかった。けれど、眠れるようになったし、仕事の夢をみなくなった。
僕は薬が効いたかよくわからないまま放置してしまったけれど、薬が効いていないと思ったときは薬を変えてもらえばいい。
やはり、心療内科にいって自分はよかったと思っている。
ちなみに、円形脱毛症は、同時に通っていた皮膚科で治療を続け、地肌に直接注射を打つという治療で治した。
さいごに
僕が行ったこの心療内科は「もう来なくていいよ」と言わないので、結局僕は2年くらい通った。
2年くらい通ったあと、僕の仕事が落ち着き始めた。
そして、なんとなく「もういいか」と思ったので、心療内科に行くのをやめてしまった。
(向精神薬をたくさん処方されている人は、断薬症状が出てしまうので、これは絶対にやってはいけない。必ず医師の指示に従って減薬していこう)。
この時点ですでに、僕はすこし具合がよくなってきていて、「自殺したい」と思うことがほとんどなくなった (ふとしたきっかけで「自殺したい」と思うことはあったけど、前ほど深刻な感じじゃない。)。
心療内科は行くまでのハードルが高いけれど、行けばふつうの病院と変わらない。
他人の目が気になるという人もいるかもしれないけれど、他の患者さんも自分と同じような人ばかりだから、「あの人も苦労しているんだな」くらいにしか思わない。
もし君が「自殺したい」と思うくらい苦しんでいるなら、心療内科に行ってみよう。
あの苦しみから解放されると、人生が生まれ変わったように素晴らしいものに感じる。